エイミーが階段を上がってくると、シェルドンが踊り場でうろうろしていた。
エイミー
なにしてるの?
シェルドン
ビュリダンのロバについて深く考えてるんだ。
エイミー
なるほど、じゃあそっとしとく。
シェルドン
ビュリダンのロバを知ってるの?
エイミー
もちろん。ジャンビュリダンが示した哲学的テーマね。空腹のロバが干し草に続く分かれ道の前でどちらに進むか決められず餓死してしまう。
シェルドン
その通り。
エイミー
あなたに餓死されたら困る。ナスをどうぞ。
ビュリダンのロバについて議論を交わす二人。
エイミー
ビュリダンのロバはアリストテレスを倒錯したと言われてるの。
シェルドン
ほんとに?
エイミー
アリストテレスの例えでは、空腹で喉も渇いた人が食糧と水どちらを選ぶか悩む。
シェルドン
なるほど。12世期のペルシャの哲学者のガザーリーの話とも関係あるのかな。二つの木の実のどちらを選ぶか悩む話だ。
エイミー
ガザーリーがアリストテレス的だって言うの?彼、根っからの反アリストテレス主義者よ。
シェルドン
ガザーリーが反アリストテレス主義者?それは聞き捨てならない。
ペニーの部屋に吸い込まれていくシェルドン